インタビュー

霧島の食材を受け継ぐ 「生産者の想い」

霧島山の水で育つ「日本一のお茶」

果てしなく続く広大な台地、錦江湾に浮かぶ桜島、遠くには神々しい霧島の山々。ここに一つ加えたい風景があります。太陽の光をいっぱい浴びて輝く濃い緑の茶畑。どこか懐かしい日本の原風景は、全国茶品評会で産地賞を3年連続受賞した「霧島茶」の古里です。

澄んだ緑色とすがすがしい香り、まろやかな旨み。日本一の誉れ高いお茶は、霧島の豊かな自然によって生まれます。寒暖の差と冷涼な環境、「霧島」の由来となった深い霧。そして、霧島山で育まれた清らかな水。

さらに、新鮮な茶葉を素早く蒸して、葉をもむ製法が加わることにより、霧島茶の豊富な栄養と旨みが引き出されます。霧島の人が「いつも飲むお茶は日本一」と誇らしげに語る理由はここにあります。

有機栽培茶の先進地「霧島」

霧島茶には、有機茶の先進地としてのもう一つの顔があります。全国の茶園面積の占める割合が3%といわれる有機栽培(オーガニック)。害虫が付きやすいお茶は、これまで無農薬で栽培することが難しいと言われてきました。その中で、45%という全国トップクラスの割合を誇るのが鹿児島県です。

実はその大半を占めるのが、霧島の中山間地域。害虫が発生しにくい冷涼な中山間地域は、茶園同士が隣り合う部分も少ないため、周囲の環境に影響されにくいという、有機栽培に取り組みやすい条件がそろっています。

有機茶は農薬を使わないため、病害虫や雑草との戦い、健やかで美味しいお茶を育てるための肥料作りなど、栽培には高い技術と手間暇がかかります。

 

「有機茶栽培の仲間を増やすことで技術を高め、有機茶について語れる場所を作りたい」。霧島で20数年前から有機茶に取り組む西製茶工場の西利実さん、新緑園製茶の新宅友和さんらが発起人となり結成したのが『OTY鹿児島club』です。

 

有機茶の本当の美味しさを知ってもらいたい

『OTY鹿児島club』は、「Organic(有機)」「Tea(茶)」「Youngman(青年)」の頭文字から名付けられた、有機生産農家の若手で結成されたクラブです。メンバーは鹿児島県内の20代から50代までの21人。ほとんどが茶生産農家の2代目、3代目で、その9割が霧島市を占めます。

「有機茶の栽培で一番大事にしたいのは、美味しいお茶を作ること」と話すのは今村茶園の今村広嗣さん。メンバーで一番茶を持ち寄り、 それぞれのお茶を見て、飲んで、嗅ぎ、良い点や改善すべき点について意見を交換しています。八重山製茶の八重山剛さんは「毎年、どんなお茶ができるか気になります。一番ドキドキする瞬間です」と笑います。

 お茶本来の味と評される、昔ながらの渋みと爽やかさ。本当に美味しい有機茶の味をたくさんの人に知ってもらいたいと、持ち寄った荒茶を仕上げて販売しています。地元の物産館などでも完売するなど、お客さまから高い評価を得ています。

飲む人、作る人、環境にもやさしく

美味しいお茶作りに欠かせない、健やかな土作りと病害虫に強い茶樹を育てること。『OTY鹿児島club』では、太い枝や大きな葉を育てるために必要な整枝方法、水を活用した害虫対策などにも力を入れています。

 

「有機栽培は簡単にできるわけではなく、時間をかけて取り組むやりがいのある仕事」と話す西製茶系列の末元正輝さん。蔵園製茶の蔵園孝博さんも「有機栽培の魅力は、飲む人、作る人、環境にもやさしいこと。霧島の地で有機茶の輪がもっと広がれば嬉しいですね」と期待を込めます。

「有機栽培は自然の環境を促すように周囲の環境を作るところから始まります。未来でもお茶や野菜、木を育てられる土壌を今から残しておきたい」。

霧島山を望む段々畑の一角に広がっていた有機茶の畑。つややかな葉に彩られた枝は力強く、幹はしっかりと地面に根付いています。ふかふかで柔らかな土からちょこんと顔を出すミミズ。畑の脇には黄色い花が風に揺れ、小さな虫が羽を休めていました。茶と虫や草との共生。

そこには有機栽培ならではの健やかな世界と、美味しくて安心・安全なお茶を届けたいとという、生産者の想いが広がっていました。

 

OTY鹿児島club

2012年、鹿児島県内の有機栽培茶の若手生産農家が集まり発足。毎年3~4回、荒茶求評会や、美味しいお茶作りのための現地検討会などを開催しています。豊かな土地を活かしたお茶作りで、飲む人に安心・安全を届けるための活動に取り組んでいます。
http://kirishimacha.jp/

 

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